南東北紀行 vol.2
平泉から仙台へ戻ると夕方の5時過ぎである。ここから宮城交通の急行バスで30分ほどで今宵の宿のある秋保温泉に着く。岩沼屋は和風の旅館だが、シングルルームも備えているので、一人旅にはこの方が丁度良い。
先ず一風呂浴びてから、お食事処での夕食に向かう。普段あまり呑まない日本酒を呑むことにした。どれにしようかと品書きを見ていると『日高見(ひだかみ)』という名前が目に入った。石巻の酒である。
かつて石巻周辺は「日高見国」と呼ばれており、その中央を流れる川は「日高見川」と呼ばれていたそうな。そしてこの川が後に北上川と呼ばれるようになったということである。北上川と云えば東北地方最大の河川であり、岩手県を源流とし、盛岡市、北上市、奥州市、一関市などを通って宮城県に入り、石巻市で太平洋に注いでいる。もちろん今日訪れた平泉を流れていたのもこの川である。これは是非呑んでおかねばならない酒だろうと勝手に頷いて注文。スッキリとした甘さで、とてもいい香りのするお酒である。こういう日本酒なら大歓迎だ。
余り緩くり飲んでいたものだから、周りの席のお客は食事を終えて次々と帰ってしまい、いつのまにか店内には独りきりである。いい加減食事を終わらせて部屋に戻る。あとは風呂に入ったり風呂に入ったり風呂に入ったり・・・・・
翌朝、朝風呂に浸かってからチェックアウトする。旅館のバスで仙台駅前まで。ロッカーに荷物を預けてからいよいよ宮城県美術館へ。到着すると休館日かと思われるほど閑散としているが無理もない。木曜の午前中である。それに都内の美術館と一緒にしては不可ない。あの混雑振りが異常なのだ。それにしてもこの時間帯は少なすぎやしませんか?時には展示室内にワタシ独り、係員すら見当たらない場合さえあって思わず、
などと呟きたくなってしまう。おかげで背伸びをしたり覗き込んだり人にぶつかられたりオバチャンの話し声に悩まされたりすることなく目の前でクレーの絵を堪能することが出来た。図録および絵葉書数点を購入。
美術館を出てせっかくなので仙台城趾に向かう。地図で見るとそれほどの距離でもない。昨日の反省もなく「今回の旅のテェマはやはり歩きだ!」と調子に乗って徒歩で向かう。ところが・・・・・
城などというものはやはりそれなりの高台にあるもので、徒歩で向かう人はほとんど居ないようである。道理で満足な歩道すら無い筈だ。車道の脇をとぼとぼと歩いていくがどんどん勾配が急になってゆき、横を追い越してゆくタクシーのエンジン音からもかなりの坂道であることが判る。これでは昨日の中尊寺月見坂以上ではないか!と、心で叫びながら歩き続けること数十分、ようやくのことで到着。有名な伊達政宗の像があるあの場所である。正宗の見ている方角に目を遣ると、仙台駅を中心とした市街地方面を見渡すことが出来るが、いい眺めを楽しみつつも同時に随分登ってきたことを思い知ってどっと疲れが出る。そういえば2時過ぎになるというのに昼食がまだだった。見ると丁度近くに牛タンの店がある。仙台といえば牛タン、牛タンといえば仙台ではないか。ここで喰っておかない手はないだろうと、早速店内へ。時間が時間だから客はワタシの他2組だけである。
注文した牛タン定食は一番標準的なメニューで、味噌味と塩味の牛タンが半々、それに麦ごはんと牛テールスープが付いている。肉は柔らかく、噛み締める旨みが。美味である。
仙台城趾からの帰りはさすがに歩きを断念。乗ったタクシーの運転手は東北訛りがかなり強いが、陽気な人で色々と仙台の街を説明しながら駅まで連れて行って呉れた。一人旅にはこういう運転手が嬉しい。仙台発は4時54分。薄暗くなる時間である。新幹線はしだいに明かりが灯っていく仙台を離れた。
今回は行けなかったが、平泉周辺には猊鼻渓、厳美渓、水沢の正法寺などまだまだ行ってみたい場所が沢山ある。また是非訪れて、そして歩き回ってみたいものである。勿論もう少し歩きやすい支度で。
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